本には恋愛、サスペンス、ミステリーなど様々なジャンルがあります。中でも現実世界では起こり得ないことが起こるのが、ファンタジー作品の魅力。
現実世界にはいない動物や文化など非日常の世界観は想像力を豊かにさせてくれます。今回は3作品の不思議な世界観が魅力のファンタジー作品についてご紹介したいと思います。
ミヒャエル・エンデ「モモ」
1973年に刊行され、今でも多くの人に愛されている児童文学作品です。児童文学作品ですが、その厚みはなかなかあるので、ちょっと躊躇してしまう人もいるかもしれませんが、一度読み始めると、物語の中にどっぷりとはまってしまうことでしょう。
主人公はモモという少女で、とある街にある日ふらりとやってきます。彼女は不思議な魅力を持っていて、周りの住人とも仲良くなっていくのですが、その住人達に近づく灰色の男たちの存在がありました。
彼らは「時間貯蓄銀行」と言い、人々の時間を奪っていくのでした。そして、余裕のなくなってしまった人々はそれまでとは様子が大きく異なり、モモも戸惑いを隠せません。
彼らを元に戻すために、モモが奪われた時間を取り戻すというストーリーです。この作品は、まさに時間に追われてしまっている現代人におすすめの物語です。
何でもない時間の大切さを痛感させてくれるので、大人にこそおすすめしたい児童文学です。
辻村美月「ツナグ」
もしも亡くなった人に会えるのであれば、何を話したいですか?きっと大切な人を亡くした経験を持っていれば、誰もがもう一度話したいと思ったことがあるのではないでしょうか。
この作品は、亡くなった人と一度だけ話す機会を作ることができる「ツナグ」という不思議な役割を持つ人間が登場する物語です。
死者はたった一人の生者と1度しか会うことができません。だから家族何人もが亡くなった人とは会うことができないので、誰かと会ったことがある死者はもうツナグの力を借りて呼び出すことはできないのです。
そのため死者は会うかどうかを選択することも可能です。また、会うタイミングは決められていて、そしてどの時間話せることができるのかということも決められています。
亡くなった母親に会いたい人、親友に会いたい人など様々な人物がツナグの元を訪ねてきます。会ったからこそ分かる思いもあれば、知りたくなかった思いもあります。
それぞれの人に様々なエピソードがあり、自分がもしも誰かに会えるチャンスをもらえたらどうしようかとつい考えてしまう作品です。
浅田次郎「椿山課長の七日間」
少し「ツナグ」に似たテイストの作品です。主人公は椿山和昭という百貨店に勤めていた中年男性。課長職についていました。しかし、ある日脳溢血により倒れ、そのまま帰らぬ人になってしまいます。
現実世界には彼のやり残したことがたくさんあるため、戻りたいという意思を強く持っていました。
他にも何名か同じような思いを持つ者がおり、共に現世へと戻るのですが、そのままの姿では戻ることは許されません。
椿山の場合は若いスレンダーな女性の姿となって現世へ戻っていました。また許された時間は初七日までの期間。この間にやり残していた未練をすべて解消させなければいけないのですが、改めて自分の周りの人間と向き合った結果、今まで見てこなかった現実と対面することになるのでした。
未練のない人生を歩むということは難しいことかなと思うのですが、この作品を読むと知らないでいることも幸せの一つなのかもしれないと思ってしまいます。
悔いのない人生を歩もうと思った時に、周りの隠された思いに気づいたら、あなたはどうしますか?
まとめ
今回ご紹介した2作品は黄泉の世界が登場する少し変わった日本の作品でした。亡くなった人と出会える「ツナグ」という作品と亡くなった人が会いに来る「椿山課長の七日間」という作品。
目線は変わりますが類似した雰囲気を持っているので、両方とも読んでみるとまた違う感想を持つかもしれませんね。
また、はじめにご紹介した「モモ」は海外の児童文学ですが、忙しいと嘆いている現代の大人にこそ読んでいただきたい作品です。
特に日本人は時間の使い方が上手くないとされているため、この作品を読んで改めて時間の使い方を考えていただきたいです。
読んでみるとどうしてこの作品が世界中で長く愛されているのかということもきっと分かるでしょう。
今回は3作品に絞ってご紹介しましたが、他にも想像力をかきたたされるファンタジー作品はたくさんあります。
普段あまりファンタジー作品を読まないという人も、この機会にぜひ手に取ってみてはいかがでしょうか。